基礎教育における格差対策のための教育行政強化

1. 案件の概要

(1)案件名
和文:基礎教育における格差対策のための教育行政強化
英文:Education Administration for Reducing Disparities in Basic Education

(2)研修期間
全体受入期間:平成25年10月16 日(水)~ 平成25年11月15日(金)
技術研修期間:平成25年10月21日(月) ~ 平成25年11月14日(木)

(3)研修員人数 14カ国17名 ※添付4「研修員リスト」参照。
(アフガニスタン、クック諸島、ガーナ、インド、マラウイ、ネパール、ソロモン諸島、南アフリカ共和国、東ティモール、ウルグアイ、ウズベキスタン、イエメン、ザンビア、ジンバブエ)

2. 研修内容

(1) 研修全体概念図及び単元目標ごとのカリキュラム構成
※別添1「研修体系図」参照。

(2)日程表
※別添2「研修詳細計画書」参照。

3. 案件目標(アウトカム)と単元目標(アウトプット)

(1)案件目標
-案件目標
“沖縄県の基礎教育の格差是正の取組からの学びを踏まえた自国・地域で導入可能な施策案及び自らの行動計画案を作成する”

-研修(投入)
A学びの整理と研修に参加した教育行政官の担当部署における教育格差に関する課題を整理する
a) ジョブレポート発表
b) ジョブレポートを踏まえた基礎教育の現状・課題抽出ワークショップ
B自国の課題解決への対応策を作成する
a) 沖縄の学びの整理、沖縄の経験の各国への適応についてのグループワーク
-成果
Aの課題の整理については、研修員が各国の教育行政の現状と課題を把握できたとともに、これら情報をワークショップで表にまとめたことで教育行政比較が可能となったことから、16名全員が目標を達成できた。
Bの課題解決への対応策については、沖縄県で学んだことから自国に応用又は適応できるものを抽出し作成できた。

-教訓
課題解決への対応策については、沖縄県の教育行政の背景から立脚した現状と対応策が講じられており、研修成果は高いと評価している。他方、研修員それぞれの国の教育事情と課題に対し、具体的な対応策を作成するには、個別のコンサルテーションが必須である。

(2)単元目標
-単元目標Ⅰ
“日本、沖縄県の教育行政の仕組みを理解する”

-研修(投入)※詳細は添付3「シラバス」参照。
a) 日本の教育制度等
b) 沖縄県の教育の歩み
c) 沖縄県立教育センターの役割等
d) 生涯教育・社会教育
e) 沖縄県との人的ネットワークの構築

-成果
本単元については、沖縄県の教育、特に焦土と化した戦後の復興に焦点を当てた教育の歩みから、現在の教育施策等の制度面、教育関係機関や組織の役割等の運営面、生涯・社会教育の運用面、さらには沖縄県との人的ネットワーク構築を目指した意見交換会など、時間・内容とも十分に配慮し、研修員の理解を進めた。e)では、沖縄県立教育センターの指導主事等との意見交換会が実施され、僻地への異動が難しいなど人事面での途上国との違いや教員の社会的認識の変化など日本とも共通した課題などが浮き彫りとなり、「もう少し議論を深める時間が欲しい」という意見が出るなど極めて高い研修成果が発現した。

-教訓
特に、研修員と沖縄県の指導主事等との意見交換会は有意義であり、それぞれの国の課題解決への一助となると確信した。そのため、意見交換を通じお互いが教育に携わる者としての使命感を高められる内容となるよう、会議の質を高めたい。

-単元目標Ⅱ ※詳細は添付3「シラバス」参照。
“格差対策の取組について学ぶ”

-研修(投入)
A地域格差対策 (へき地・小規模校の教育を踏まえ)
a) へき地・小規模校の現状
b) へき地教育の現状
c) 人材育成
d) 教員養成
e) 沖縄県へき地教育研究大会への参加(渡嘉敷島)
B 経済格差・貧困対策
a) 就学支援
C 特別支援教育
D 学力向上の取組

-成果
本単元では、地域格差対策、経済格差対策、また特別支援教育について研修を進めた。研修員からは、へき地教育や特別支援教育への予算の割り当てや児童生徒に対する教育の在り方等に非常に高い関心が寄せられた。本コースの核となる格差対策が、沖縄県の教育行政のみの努力では成り立っておらず、保護者や地域の人々の教育に対する想いや取組の在り方等によっても支えられている現状を目の当たりにし、研修員すべてにとって実り多い充実した研修となった。

-教訓
日本において、へき地教育や特別支援教育等への予算の配分は、すべての都道府県において配慮され、教育の機会が保障されている。
教育の予算配分については、研修員のそれぞれの国の課題といえるが、“少ない予算でいかに教育を推進していくか”は、沖縄県の戦後復興の取組から多くの学びを提供できた。

-単元目標Ⅲ
“沖縄県の歴史等を踏まえた人間教育や平和教育等について理解する”

-研修(投入)※詳細は添付3「シラバス」参照。
a) 平和教育・平和行政
b) 文化・歴史とのふれあい

-成果
a) については、沖縄県平和祈念資料館での講義とともに、「資料館内の展示物の見学」「平和の礎の見学」「ひめゆり平和祈念資料館見学」等で、すべての研修員が、それぞれの国の事情等を思い起こしながら、平和教育の大切さについて再認識できた。
b) については、特に文化の教育への導入が、戦後復興から現在までの教育再生に寄与していることを認識した。また、中高校生の演劇の練習風景や「国際協力・交流フェスティバル2013」での本番にすべての研修員が感動を覚えたとの感想から、文化の教育の導入のグッドプラクティスを提示することができた。

-教訓
平和教育については、研修員のそれぞれの国の事情に応じて進められているが、沖縄県では教育の一環としてしっかり位置づけられており、そのノウハウは大いに参考になった。
文化力の教育への導入は、少ない予算でも、それぞれの国の文化に対する想いがあれば可能であり、地域の人々の協力を得ることで実現可能性は高まる。

4. 研修案件に対する所見

(1)研修デザイン~研修期間・プログラム構成等
① 研修期間については、参加者が何を学んだかについて整理し、学んだことを振り返  ることで学びを定着させるための時間が不足しており、現在から1週間程度長い期間が望ましいと考える。
② 各単元の配列については、基本的な日本の教育制度や沖縄県の教育概要等を研修した後、単元目標を踏まえた講義を行い、さらに、学校現場や関係機関等を訪問し理解を深めることができたことから、カリキュラムは適切である。

(2) 研修内容(コンテンツ)~研修プログラム内容・研修教材等
① 沖縄県教育の戦後復興から現在までの歩みを踏まえ、パワーポイントやレジュメ等を通して研修を展開し、教材は適切であった。
② 講師については、沖縄県内大学教授等、沖縄県教育庁等の指導主事、関係機関の研修トピックに対応できる第一線のエキスパートに依頼し、それぞれの専門分野にかかる内容を詳しく講義できた。
③ 研修内容は、戦後復興から現在までの歩み、日本の教育制度、本県の教育概要等、へき地教育、平和教育、PTA活動等を理解するとともに、小・中・高・特別支援学校等の訪問及び交流、沖縄県へき地教育研究大会への参加、ホームステイの体験、県立教育センターの指導主事等との意見交換会等を通して、沖縄県の教育に携わる者の教育への想いや沖縄県民のおもてなし等について理解を深めることができた。

(3) 研修の効果を高める工夫
① 個々の研修員のポジションや能力・背景等に違いがあるため、バライティーに富む研修内容を設定した。そのため、詰まった日程になったのは否めない。
② 沖縄県の教育事情等についての講義だけではなく、小・中・高・特別支援学校の学校現場や関係機関等の直接訪問、沖縄県立教育センター指導主事等との意見交換会等の実習・演習があり、現場の事情や課題等について理解の定着が進んだ。
③ 新たにビーチクリーン活動、ホームステイ体験、沖縄県へき地教育研究大会への参加、中高校生の演劇の鑑賞等を取り入れ、研修員にとって教育は地域の力が大きいことを十分に浸透できた。
④ 研修内容は、講義の他に、グループディスカッション、沖縄県の指導主事等との意見交換会、沖縄県での学びの整理にかかるシートの活用等があり、帰国後の課題解決に向けた意識が醸成された。

(4) 研修対象の選定(割当国、対象機関、研修員)
① それぞれの国を代表する研修員が参加したが、英語力に課題があるためか、講義後の質疑応答等がほとんどない研修員もおり、理解度に差があったと考える。
② 世界の多くの開発途上国に、公平な参加の機会を提供願いたい。
③ 基本的なこととして、研修に耐える英語力は当然として、積極的に学ぶ姿勢・態度を持つ人材を選定出来ることが望ましい。

(5) 研修運営体制
① 研修実施機関の体制はチームワークが十分に取れており、互いの役割をしっかり果たすことで、全ての研修が滞りなく実施できた。
② 次年度に向け、研修途中での実施状況等についてJICAとしっかり連携を図り、報・連・相を確実に実施したい。

5. 次年度へ向けた改善点及び提案

(1) 評価会及び反省会における指摘事項
① 研修内容、運営体制、運営方法等がしっかりしており、研修の目的は達成できた。研修員からもおおむね高い評価結果を得た。
② 講師からの研修にかかる原稿提出については、締め切りに間に合わない等の課題があった。
③ 研修プログラムがバライティーに富む内容であったため、研修員にとっては全体的に厳しい日程となった。そのため研修の学びの振り返りの時間等がなく、振り返りが十分でなかった。こうしたこともあり、研修員の相談等に乗ることができなかった。
④ 実践案報告会においては、時間の都合上研修員の報告とアドバイザーのアドバイスだけになった。

(2)次年度以降の改善計画(案)
① 講師への原稿依頼を早めに行い、締め切り日を1か月前に設定することとする。
② もう少し余裕の持てる研修プログラムにし、各週の週末には学び振り返りの時間を設定することで、各自の課題への対応策の策定が可能となるのではないか。さらに、課題への対応策を策定しやすいフォーマット等を提供し、最終報告会の前に作成してもらうようにする。
③ 研修の休憩時間等を利用し、研修員とのコミュニケーションが取るように心がけ、理解を深めていくようにする。
④ 沖縄県教育庁等に対して、早めに実践案報告会への参加を依頼するようにする。
⑤ 報告会の時間をもっと延ばし、研修員同士の意見交換ができるようにするとともに、学びの共有を図る。
⑥ 教育予算に係る研修を設定する。
⑦ 沖縄県立教育センターの指導主事等との意見交換会を時間的・内容的な面、参加者の面等を検討し、さらにグレードアップを図る。
⑧ コーディネーターとの連携を密にし、その活用を十分に図るようにする。
⑨ 実践案報告会の発表については、十分に時間を取るようにし、作成中の個別アドバイス等を行うよう時間配分を改善する。
以上