実施期間:2022年5月~2025年4月(3年間)
背景・目的:
クラビ市はバンコクから南に783㎞、アンダマン海に面し、クラビ県の経済、行政、サービスを担う県都として位置付けられています。国際空港があり観光が主要産業でありますが、市外のビーチリゾートに大きく依存しているため、結果として市内は素通りとなり、市内の観光開発が課題となっています。クラビ市では、アンダマン文化等の地域資源を活用した「アートと文化・歴史・エコツーリズムの観光都市」実現に向けた観光や特産品開発に高いニーズがあり、また、タイ地方自治体が5年ごとに作成する地方戦略開発計画では、環境、観光業を軸とした経済のバランスを取ることを目標としています。そこで名護市の経験を活かしながら、クラビ市のブランディングと商品開発の実践を行い、クラビ市としてのブランディング、マップづくり、体制づくり、実際のトライアルを通じた経験を身につけることで継続的な商品開発の体制が整備されることを目標にしています。
事業の評価:
<コミュニケーションと目標設定の重要性>
プロジェクト関係者間の信頼関係を築くためには十分なコミュニケーションが必要でした。日頃のコミュニケーションからプロジェクト実施上の問題がわかることも多々あり、異なる言語、文化、習慣に起因する問題も含めて、コミュニケーションによる解決・予防が最も有効です。同時に、明確な目標、活動計画が設定されることも重要です。目標とともにアウトプット、活動、スケジュールをしっかりと協議し、合意の上でプロジェクトをスタートすることでより安心感と展望を持って取り組めます。プロジェクト開始当初はコロナ禍であり、名護市、クラビ市の行き来が難しい中、プロジェクト目標を達成するためのアウトプット・活動内容を協議し、合意するまでに時間を要しました。重なる協議で合意しPDM改定後は目標となすべきことがお互いに明確になりスムーズなプロジェクト進行が実現しました。
<ブランディングによる地域活性化>
プロジェクトの活動を通じ、クラビ市の文化、伝統、宗教、食文化など多くの情報が集められ、クラビ市の文化、アート、宗教などのクラビ市の特色が明確になりました。この特色を考察したことで、クラビ市を特徴付ける地域ブランディングが強化されました。今では、クラビ市のブランドとして、訪問する外国人や観光客に情報を発信できるようになり、観光客がコミュニティを訪問することで地域の活性化にも貢献できるとともに、かかわる職員のクラビ市への理解も深めることができました。このことは、本プロジェクトが、クラビ市の地域活性化やブランドイメージの確立に重要な役割を果たしたといえます。
<名護市とクラビ市の総合的自立発展性>
クラビ市は、タイ中央政府に本プロジェクトを優良事業として申請したいと考えています。また、本プロジェクトのアンケート分析の成果を持続させ、クラビ市役所の福祉や環境などの各部署で行えるようになることが望ましいと考えています。名護市も、クラビ市と連携した付加価値を加えた特産品の開発を検討しています。このようにプロジェクト終了後の両市の連携においても、総合的自立発展性が高いプロジェクトであったといえます。

